黄昏純愛事情



 ちゃんは喧嘩っ早い。どれだけ喧嘩っ早いかと言うと、ちゃんの双子の兄であるかっちゃんよりも喧嘩っ早いんじゃないかっていうくらい。二人と出会ったときから高校生になった今でも、稀にかっちゃんとちゃんの2人でよく喧嘩しているのを見かける。と言っても、喧嘩に個性は使わない。資格未取得者が公共で個性を行使することは禁止されているからだ。それに、自分たちから喧嘩を売りにいくことは絶対にしない。売られた喧嘩は速攻で買っているけれども。自己防衛を理由にできないからだ。かっちゃんはみみっちいから、そういう内申に響きそうなところはきちんと守るし、ちゃんにもきっちり言い含めている。かっちゃんが殴ってよろけたやつを、ちゃんが蹴ってとどめをさす。兄妹だからできるコンビネーションだなって、偶然喧嘩の現場を見た切島くんが言っていた。感心してないで止めてほしかった。

ちゃん、また喧嘩したの?」
「ん」
「手、怪我してるよ。手当てしてあげるから、おいで」
「いいよ別に、勝手に治るし、こんなの」
「だめだよ。ちゃんは女の子なんだから」

 どうやらちゃんは、自分を女の子扱いされることに慣れてないらしい。そりゃまあ、ごつい先輩にも臆せずに倒していけば、女の子扱いされることもなくなるだろうけど。でも僕は、ちゃんの可愛いところ、いっぱい知ってる。意外によく笑うところだとか、甘えたなところだとか、ちょっと人見知りなところだとか、他にもいっぱいある。逆にありすぎて、すごく困る。僕の心臓がもたなくなってしまう。

「お、緑谷なにしてんの」

 折角2人っきりだったのに、邪魔が入った。上鳴くんだ。ちゃんは人見知りだから、ちょっと困る。

ちゃんに手当てしてるんだ」
「えっ、保健室で手当てしてもらえばよくね?」
「いいんだ、これは」

 昔から僕しかやったらいけないことなんだ。
 そう言うと意味がわからなかったのか、ちゃんはこてりと首を傾げた。上鳴くんはちょっとビビったようで、どこかに行ってしまった。

「どゆこと?」
「んー?ちゃん人見知りでしょう?」
「ほ、保健の先生ぐらい大丈夫……」
「あ、そうだ、ちゃん、これからどっかいこっか」
「うん、おなかすいた」
「喧嘩したんだもん、そりゃあお腹空くよ」

 ちゃんには僕の考えてることなんて知られたくない。知らなくていいとすら思う。ちゃんには好きにしていて欲しい。僕なんかが束縛していい人じゃないからだ。けれども、僕以外に取られるのも嫌だから、昔からずっと、僕がずっと傍にいて、僕がずっと面倒を見てあげている。ちょっと、病んでるかな。けれど、それでもこの愛は絶対的に確かなものだ。