三日ほど籠りきりだった気がする。立て込んだ仕事や経理を片づけてシャワーを浴びた。タオルをかぶったまま朝のワイドショーに目を向けると、が日付を確認した日からは、やはり三日が経っていた。男たちの朝食は済んだらしい。厨房で洗い物をする瀬呂は三日ぶりに目撃するに感動したような顔をして、傍らの爆豪をつついた。「冷蔵庫にあるから、食いたいときに食え」「うん」爆豪が顔も上げずに言って、が目も合わせずに答える。瀬呂はただ肩を竦めただけで、皿を拭く単純作業に戻ってしまった。
タオルで頭をかき混ぜながら、三日ぶりの朝日を浴びようと出入り口のドアノブを回した。
想像はしていたけれどもやはり日光は強烈だ。広がったままだった虹彩がぎゅうぎゅうと縮まっていくのを感じる。毛様体筋、チン小帯、瞳孔、シュレム管。くらくらする目の奥。強く瞼を閉じる。それから後ろ手にドアを閉じる。数秒して薄く白んだ視界を瞬かせると、「あれっ、久しぶりじゃん」能天気な声が笑った。切島だった。
「おはよ」
「またこもりっきりで働いてたのか?性格まで暗くなんぞって上鳴言ってただろ」
そう言って爆豪を怒らせたのだ。事の顛末まで覚えていないと大変なことになるぞと諭したって、切島はきっと覚えていられまい。は髪から滑って、アスファルトに染みを作る水滴を眺めた。小さな通りに面し、すこし奥まったところにある出入り口。通りと出入り口をつなぐちいさな空間には、ずいぶんと太った猫が横たわっている。以前にも数回見かけたことがある猫だ。切島がかわいがっている野良猫のうちの一匹。
「ここで餌付けすんのやめなって言ったべや」
「だって毎日ここにくんだもん」
切島がいとおしげに猫を撫でる。ニャアと濁った声で猫が鳴いた。アレルギーを持つ爆豪が見たらきっとまた眉間を険しくする。切島だけでなく上鳴までもが動物たちをこの空間で飼い慣らしはじめるのだからには手がつけられなくて、やめろやめろと口うるさく言うことしかできない。もとより、切島にしても上鳴にしてもそれでやめられるような性格をしているなら、はじめからこんな辺鄙で清潔でない場所に、動物を呼びよせるようなことはしないだろうけれど。柔らかな物腰でいて、なかなかに譲らないのが彼らの性質であった。
ひとしきりゴロゴロと喉を鳴らすと、すっかり空になったミルクの皿と餌(切島や上鳴いわく、「ごはん」)の缶を残して猫は朝の通りへ消えていった。見返りもなにもない。「冷たいなあ」が言うと、「撫でさしてもらっただけで十分だろ」切島は穏やかに立ち上がった。を見て目を丸くする。
「、ちゃんと乾かさないと風邪ひくぞ」
「わっなにおまえ触んな」
切島がタオル越しに髪をまぜた。鬱陶しいと訴えかけるようにねめつけると、彼は久方ぶりの朝日みたく笑うのだ。