花がよく似合う人だと思う。
真っ白で硬質そうな、だけど触れると柔らかい、そんな花がいい。桜色以外の色彩を感じさせない肌色よりも乳白色にキリエの顔色は、世界がモノクロになってしまったとしてもきっとそう変わりないように僕の目に映るのだろう。
昨日から僕は遠い遠い先にキリエが死ぬときのことばかり考えている。きっと気の遠くなるくらい先の先の、鬼に笑われるどころか呆れられるようなことばかり。
遺影は表情のない顔を白黒で撮ったものがいいだとか、僕がその写真を撮りたいだとか。彼女は謙虚だけれども根っこの性格はかなりのかっこつけだから何度も撮り直してって結局はごねられるかもしれない。それならわがままも言えないくらいにモデルも顔負けのかっこいいやつ撮ってあげなきゃ、とか。
そんなことを並び立ててはひとりでこっそり小さく笑っているのだ。ここ数日間ずっと。
気味が悪くて悪趣味なことこの上ないし、くるっているのはもうとっくに知っている。おかしくたって、そんなのは元々だしもうどうだっていいんだけれど。
これは僕がおかしいんじゃない。なんでこんなことばかり考えてるのか、ってキリエがちっともこの家に帰ってこないからなんだ(確か兄に呼び出されたとやらで今日からレベイユに帰ってるんだったっけ)。最近仕事で忙しくて帰る時間も不規則になっていたせいでまともにキリエの顔を見れてなかった自分が言うセリフじゃない、ってわかってる。
仕事にやっと少しの空きが出来たからと早めに帰宅できて、それが余りにも嬉しくてスキップでもしそうな勢いで帰宅したら、今度はキリエが忙しくて結局会えないだなんて。これはしょうがないことなんだってわかっている、けれど。最終的にまとめると僕個人のわがままになってしまうわけだけど、あんまりすぎるのではないだろうか。
(会い、たい……)
わがままのことを一旦置いておいても、実のところ今僕の頭の中は未だ会ったこともない彼女の兄とやらのことでいっぱいだ。羨ましいったらありゃしない。
いくつかのイライラの意味についての結論を出すと、今の僕にはキリエが全然足りてない。ちょっとだけでもぎゅってして、お互いの鼻先を首筋に擦り付けあえたらまた全然違うのに。今の僕は1日、いや3日くらいは丸ごとキリエが欲しいくらいだ。
帰ってきたらおつかれ、って甘えさせてくれないだろうか。照れ屋なあの人のことだから思いっきり突き放されそうな気もしてきたけど。それはそれでまた嬉しいから可だ。
「いそがしすぎて、キリエが死んでも僕、知らないからね!……はやく帰ってきて」
出来ることなら思いっきり寂しげな甘えた声でそんなことを留守電に入れてやりたい。最後の全力の甘えはツンデレってやつだ、キリエが弱いやつ。
ねちっこい声と言い方に思いっきりうんざりしてげんなりして、僕にどれだけ愛されているのか実感すればいいのに。そしてばかじゃないの、と思いっきり笑ってやって欲しい。
まぁ、ほんとうに死にそうなのは何なのか、っていうと僕のジョニーなんだけれど。