この恋は俺自身の中だけで生きるだろう。

 俺は12年前のあの日から後悔ばかりしている。
 彼女は強い。学生のときからつくづくそう思わされてきた。しかし実際には彼女は自分の弱さを人前に出すのを憚っていただけなのではないか、と今になって思うのだ。彼女が魔界の人間であったこともそれを増長させる要因であったろう。自分は所詮闇側の人間で、決して綺麗なものではないのだと、O.W.L試験を前にした時期に、一度だけ吐露したことがある。それはまさに彼女の心そのもので、つまるところ常に忸怩たる思いと不安を抱え、それでもなおそれを周囲に悟らせることなく彼女はホグワーツを卒業したのである。
 人に頼ることが苦手で人付き合いが不器用で、けれどまっすぐな信念を持つ愛おしい彼女を守りたかった。頼られる存在になりたかった。
 けれど今となっては自分の存在は彼女の助けになるどころか枷にしかならず、それがたとえ冤罪なのだとしても彼女を苦しめていることが悔しくて仕方なかった。

2015.08.17
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