「アホ、バカ、マヌケ、おたんこなす、すっとこどっこい!いいか黒野郎、耳の穴かっぽじってよぉく聞けよ」
「く、っ……!」

 そのあんまりな呼び方に思わず絶句した。彼女の姉はこんなにも口が悪いのか。おおよそとは似ても似つかない。いや、もしかしたらその片鱗くらいはあるのかもしれないが、少なくともシリウスは自分の見ているところでの口が悪いと思ったことはない。唯一、この金色の瞳だけは同じなんだな、と思った。顔立ちはのほうが幾分かやわらかな気がするし、そもそも彼女は黒髪だ。聞けば大叔母も弟も銀髪に金眼なのだという。なぜ彼女だけが黒髪で生まれたのかはわからない。父親は物心つくときからいなかったのだとずっと前に聞いたことがあった。

のこと、泣かせたらいくらお前だって許さねえぞ。おまえらにとって監獄にぶち込まれかねないような禁断の呪文だって、あたしたち魔界の黒魔女にとってはそれが普通なんだからな」

 その突き放すような言葉にはっとした。忘れていた。彼女は本来魔界の魔女で、いずれは魔界に戻らなくてはいけないということを。いや、もしかしたら忘れていたかっただけなのかもしれない。事実から目を逸らして、今の現状を引きずっていたかっただけなのかもしれない。
 そう考えたら、無償にに会いたいと思ってしまった。会って、息がつまるくらいに抱きしめて、声が枯れるまで好きだと叫びたい気分になった。

「、なかさねえよ」

 どの口が言うのだろうと自分で笑ってしまいそうになった。常に女を引っ掛けていると専らの噂になるような自分が、こんなにひとりの女の子に執着するようになるとは、あの頃はまさか夢にも思わなかったのだ。

2015.08.24
夢主はギュービッドの妹設定で家系上ドチャクソ美形の男前