吾亦紅が咲いた。 ひとつひとつの小花、何千何万とあるそれが、一斉に、一斉に花開いた。それくらいの奇跡だった。薄い金色は秋の青い風にそよいで、鮮やかなくちびるが月のような弧を描く。 夢の中で、あの湖の畔で出会った若かりし彼は、すこし痩せていた。俺たちは互いに手をのばす。 彼の手から小花が零れ落ちた。俺は、そっと目を覚ました。