うつくしい老成



 くしゃ、とすぐにぺちゃんこになる軽い灰色の髪が、触れられる度にびくん、と上を向く眉毛と潤むその目がたまらなく好きなのだと轟は思った。いくつになっても変わることのない、の仕草は、変わることなく轟のぎゅうっとしたところを甘く潰す。
 本当には30になったんだろうか。なんだかこんな風に触っていると15のときのにいたずらしてるみたいだ、そう思って轟はひそかに口元を緩ませる。薄暗いものではない、どちらかというとあかるめの背徳感と、部屋のオレンジの間接照明が、ふたりの関係をプラトニックなところから飛び出させようとはしない。困ったものだ。もう気持ちを伝えてから半年近く、轟はの髪を撫で頬をなぞり、ときたまキスをする、それだけで充分に満足してしまっている。まるで、性を知らない幼児の様な恋愛。轟はずっと焦らされていた。これから先に進むためのアクションは何が一番正解なのか、そればかりを考えている。
 だけど本当は、が自分に触れられながらふんわりと笑って見せる姿を見ていれば、それ以上に進むのはまだいいか。なんてことを思って満足して、今日もまた轟がを焦らしていたのだった。